はじめに

1. 安全な場所としてのシェルター

ケニアにおいて、LGBTQ+であることは命に関わる危険を伴うことがあります。そんな中で、Freedom House Initiatives(FHI)が運営するシェルターは、暴力や差別から逃れてきた難民たちにとって、数少ない安全な避難場所となっています。

FHIのシェルターは、ケニアに避難してきたLGBTQ+難民が一時的に身を寄せ、心身を休めることができる数少ない拠点です。ここでは、性的指向や性自認を理由に攻撃される心配はなく、安心して生活するための最低限のプライバシーと尊厳が守られています。

家族や社会から拒絶され、路上生活を余儀なくされてきた多くの難民にとって、このシェルターは「ただ生き延びる」ためではなく、「人間らしく生き直す」ための第一歩となっています。

2. 共同生活と支え合い

FHIシェルターには、10代から30代を中心とした、さまざまなバックグラウンドを持つLGBTQ+難民たちが暮らしています。出身国もウガンダ、コンゴ民主共和国、南スーダン、ソマリアなど多岐にわたります。

生活は共同体制で営まれており、食事の支度、掃除、安全管理などを分担しながら、お互いを支え合っています。互いに痛みを知る者同士だからこそ生まれる、家族にも似た絆が、ここにはあります。

3. シェルターに押し寄せる外部からの脅威

しかし、ケニアでは同性間の性行為が違法とされているため、警察や景観当局がシェルターに踏み込んでくる事例が後を絶ちません。理由もなく難民たちを逮捕し、「保釈金」と称して現金を要求する人権侵害が頻発しています。

こうした取締りは恣意的に行われ、正規の手続きが踏まれることはほとんどありません。安全なはずのシェルター内でも、外部からの脅威に怯えながら暮らさなければならないのが現状です。

4. トランスジェンダー女性難民の置かれた現実

トランスジェンダー女性の難民たちは、特に深刻な状況に置かれています。彼女たちは別の施設で暮らしてもらう形を取らざるを得ません。

ケニアでは、トランス女性がただ存在するだけで逮捕されることが珍しくなく、拘束中に性暴力を受ける事例も後を絶ちません。さらに、その場にいたシスジェンダーの難民までも無差別に逮捕されるケースが多発しています。

互いの安全を守るために、同じ屋根の下で暮らすことができない──。そんな痛ましい分断が、シェルター運営に影を落としています。

5. 生活インフラと課題

FHIのシェルターは外部から目立たないように配慮され、寝床、トイレ、調理場、水道などの基本的なインフラは整っています。しかし、資金的制約のため、食料や医療、生活必需品は常に不足しています。

また、入居者の多くが、母国での迫害や家族からの拒絶、性的暴行など、深刻なトラウマを抱えています。精神的なケアも喫緊の課題ですが、資金や人材の不足により十分な支援が行き届いていないのが現状です。

6. 将来への希望

FHIのシェルターは単なる一時避難所ではなく、入居者たちが将来に向かって自立できるよう、職業訓練、教育支援、アートやクラフト制作の機会も提供しています。

実際、シェルターから巣立ち、自立を果たした元入居者たちも存在します。「ここで初めて、自分の存在を否定されずに呼吸ができた」。そんな声が、今もシェルターには静かに息づいています。

まだ道半ばではありますが、FHIシェルターは、絶望の中に差し込む小さな光であり続けています。

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投稿者 YusukeUeda

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