はじめに
ケニアは、東アフリカ地域でLGBTQ+難民を受け入れる数少ない国の一つです。しかし、難民たちが直面している現実は過酷であり、法的保護の欠如、深刻な社会的差別、暴力、経済的困窮など、多くの困難に囲まれた生活を強いられています。
ケニアにおける受け入れ体制の課題
ケニア政府は、難民認定の際に性的指向や性自認を迫害の理由として十分に認めていないとされています。そのため、LGBTQ+難民たちは難民認定プロセスで長期間待たされ、正式な法的地位を得られないまま、不安定な生活を続けざるを得ない状況に置かれています。
差別のため、就職機会は著しく制限され、生活基盤を築くことが困難です。さらに、都市部への移動には移動許可証(Movement Pass)が必要ですが、これを取得することは非常に難しく、生活圏を自由に変えることもできません。
カクマ難民キャンプの現実
多くのLGBTQ+難民は、ケニア北西部に位置するカクマ難民キャンプに収容されています。この地域は半砂漠地帯であり、過酷な自然環境に加え、治安やインフラも不十分です。
カクマキャンプでは、LGBTQ+難民たちは他の難民や地元住民から以下のような深刻な人権侵害を日常的に受けています。
- 性的暴行
- 身体的暴力
- 嫌がらせ
- 社会的排除
放火・襲撃事件
特に悪名高いのが、LGBTQ+難民が居住する「Block 13」での一連の襲撃事件です。2018年以降、何度も放火や暴力事件が発生しており、2021年3月には火炎瓶による攻撃で1名が死亡、1名が重傷を負うという悲惨な事件も起きました。
被害者たちは警察に通報しましたが、捜査や加害者への処罰が十分に行われた例はほとんどなく、絶望的な状況が続いています。
2018年のナイロビ大量移住とその後
2018年、カクマキャンプ内での暴力問題が国際的に問題視され、特例として多くのLGBTQ+難民が首都ナイロビへの移住を認められました。
しかし移住後、彼らへの食料支援が打ち切られる事態が発生。差別により就職先もほとんど得られなかったため、ナイロビで多くの人々がホームレスとなり、路上生活を強いられました。
難民認定と再定住の壁
多くのLGBTQ+難民たちは、カナダやヨーロッパ諸国など第三国への再定住を希望しています。しかし、ケニア政府による手続きの遅延や出国許可の拒否により、再定住の道も容易には開かれていません。
自立支援の取り組み
厳しい状況下でも、一部の支援団体は、
- オンライン教育プログラム
- デジタルスキル習得支援
- リモートワークの斡旋
などを通じて、難民たちが安全な環境で収入を得られる機会を提供しています。
結論
ケニアにおけるLGBTQ+難民の現状は、法的保護の欠如、深刻な差別、暴力、経済的困窮という四重苦に直面しています。
カクマ難民キャンプ内での放火や襲撃、ナイロビ移住後のホームレス化など、単なる「避難」では済まされない深刻な人権侵害が続いています。
国際社会、国連、NGOは、さらなる支援と保護措置を講じ、ケニア政府に対しても、難民の権利と尊厳を守る責任を強く求める必要があります。
参考文献
- Hopes for LGBTQ+ asylum fade as Kenya snubs ‘those letters’
- Kenya: Kakuma refugee camp not yet safe for LGBTI asylum seekers (Amnesty International)
- UNHCR Statement on the situation of LGBTIQ+ refugees in Kakuma
- Ebar.com記事: Kakuma camp firebomb attack